What is that reason?
「みんな〜〜大ニュース気〜〜!!b(>0<;)/」
ここは華武高校野球部の部室。
2年生でほぼ情報収集係、朱牡丹録が煙をたたせそうな剣幕で入ってきた。
「どうした?録。」
主将・屑桐無涯が珍しくも慌てている後輩に部員全員の質問を代表して聞いた。
そう。朱牡丹は小柄で可愛いともいえる外見とは裏腹に、かなり冷静な人間である。
驚く事はあっても、それは外面だけで、心底驚いたり慌てたりとは意外と無縁であったりする。
その朱牡丹がこのように慌てているのだ。
かなりの重要事項であろう。
他の部員たちも同様に朱牡丹に視線を集中させた。
「あ、あの十二支の猿野が、『HEAVEN』だった気!!b(@0@;)d」
「ええっ??!!」
「マジっすか、録センパイ!!」
「…おい、マジかよ?ガセじゃねえのか?」
「…信じられん話じゃのう…?」
速攻で墨蓮、御柳、帥仙、桜花が反応した。
『HEAVEN』といえば、年頃の若者のみならず、
子どもから大人に至るまでその名と美貌を轟かせる謎のモデルである。
高校生であろうことは知られていたが、本名、詳しい年齢その他の素性も一切明らかではなかった。
それが、あの猿野天国であるというのだ。
驚いた者たちの反応は当然であると言える。
が。
「…録。「へぶん」とは何のことだ?」
「おれもわがらねえ…。」
「…はい…?」
「…。あの、屑桐さん…白春…もしかしなくとも…『HEAVEN』を知らな気?(・▽・;)」
「知らん。」
「知らないべ。」
意外というか予想通りというか…約2名この事態に説明が必要な人物がいた。
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「…ふん、野球をおろそかにして…そのような暇があるとはな。」
一通りの説明を聞くと、屑桐はそう答えた。
野球一筋の屑桐にとって、モデルなどという「俗な」職をしながらの部活動は、感心できる事ではない。
…というのは表向きで。
屑桐は、天国に密かに想いを寄せており、このように多くの人間が先に彼の存在を知っていた事に対し、
穏やかでない気持ちを渦巻かせていたのだ。
勿論、華武高の他の面々も主将のそんな気持ちは先刻承知であり、
自分たちも微妙に反応は違うにしろ、基本的な思いは一緒だった。
また、主だったメンバーの他にも、「HEAVEN」のファンだった人間も多く。
(信じられねーけど、録センパイからの情報だしな…。)
(サインとかもらえねえかな…)
(録センパイが持ってた写メールぜってー欲しい!!)
などと思いながら一度会った天国…「HEAVEN」の記憶を必死で掘り起こしたりしていた。
「ってか、「HEAVEN」てこの4月から1年活動休止するとかで今モデルしてねーんすよね。
確か。」
「あー。かなり話題になってたな。理由とかも不明っつってさ。」
「4月…っていうことは、高校入学してからだね。
じゃあ野球するために…?」
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「凪と会ったから…ってことかな〜〜?」
所変わってここはセブンブリッジ学院。
野球部3年、4番バッターの鳥居剣菱は雑誌の記事を見てそう呟いた。
「あら、剣ちゃんもそのニュース見たのね?」
その様子を見て、剣菱の相方、キャッチャーの中宮紅印が来た。
「驚いたわねえ、あの代打の子がHEAVENちゃんだったなんて〜〜。
すっごく印象的な眼をしてたのに、アタシとした事がうかつだったわ。」
紅印にとっても、天国がHEAVENであったことは衝撃だった。
ファッションを重視する紅印がHEAVENを知らないはずは勿論なく。
むしろファンといってもいいほどだった。
「もう、準決勝であったら絶対…い〜〜ことしちゃうんだからD」
そう、何だかとっても如何わしそうな決意をするのだった。
「紅印〜〜何か怖いよ?」
「あら?アタシなんかいいほうよ剣ちゃん?
雀なんか見てごらんなさいな。」
「剣菱〜〜大変アル〜〜!!」
「……………(機械的な吐息)」
同じく野球部員、王桃食と空環土木の二人が慌てて(慌ててるのは一人だが)声をかけてきた。
「どうした…うっ。」
剣菱が桃食の指差す方向を見たところ。
周りまで暗くする暗雲を背負った霧咲雀を発見した。
「ど…ど〜〜したの?雀〜〜?」
「だから言ったでしょ?雀の方が大変なのよ。」
そう。霧咲雀、彼は「HEAVEN」ファンクラブの会員であり、
HEAVENの大ファンだったのだ。
それなのに。
「俺…退屈…発言…HEAVEN…眼前…。」
彼は、猿野天国に会った時に退屈だと一足先に帰ってしまったのだ。
崇拝というかほとんど愛情に近いものを抱いてしまっているHEAVENの前で。
あのことで自分はしっかりHEAVENに覚えられてしまっているだろう。
かなり嫌な形で。
雀は気づかなかったこともショックだったが、HEAVENを堂々と無視してしまった自分にものすごく自己嫌悪しているのだった。
「あ〜〜たた、皆大変みたいだね〜〜。」
そう思いながら、また剣菱は雑誌の方に視線を落とす。
そこに「HEAVEN」の写真と「猿野天国」の写真。
そして、HEAVENがモデルの活動を4月から突然休業してしまった事と、
その原因を分析する(というかほとんどが野球を始めた事に注目していたのだが)記事が載っていた。
剣菱はそれを見ながら思う。
「…やっぱりてんごく君は凪のために本気で野球始めてた…ってことかな〜〜?
これってちょっと…かなり妬けちゃうな〜〜〜。」
まだ自分には天国をここまで動かす事はできまい。
そう思うと、妹に嫉妬する気持ちが生まれる。
剣菱は苦笑しながら、できるならそんな気持ちは抑えたいと、そう思った。
#############
「ねーねー兄ちゃん!この記事って見た?!」
「ああ…十二支の…。」
再び所変わってここは黒撰高校。
元プロ野球選手、村中紀洋の息子であり、エースピッチャーと4番バッターの
村中魁、由太郎兄弟が前述の他校同様騒いでいた。
すると監督である父親、村中オヤジ(おい)も息子二人の所へ寄ってきた。
「お〜〜、そのガキがあの有名な美人さんだったんだとな。」
「あ、オヤジ!!そーそー。そーなんだよな!!」
父親の乱入に、由太郎は飛びつくように話しかける。
「そーいや一回テレビの仕事で会った事があったな。
あんときゃえらく上品にしてたから、この間会った時には気づかんかったもんだ。」
「…その番組なら、私も記憶しているな。
オヤジ殿が私たちと同じぐらいで仕事をしているとえらく賞賛しておられたものだが…。」
「そうだ、あん時は魁が帰りに母さんと迎えに来てくれたんだったなあ。」
「はい。」
そして魁は、あの時会ったのだ。
HEAVENに…天国と言う名の少年に。
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『そっか〜、あれからもう3年たつんだっけ?』
「そうだな。約束どおり…野球を始めていたのか。天国。」
『ああ、あん時はオレも自分で仕事選ぶなんてこと出来なかったから
、すぐにはムリだったけどな。
高校入る時になってやっとだぜ?
おかげでだいぶ遅れたから今すっげーつれーの!!」
「ふふ、随分と楽しそうに聞こえるがな?」
『へっへ〜。ま、実際楽しいしD
次にやっと約束果たせるな。』
「ああ。待っていたぞ?」
『…ありがとな、魁。待っててくれて。』
野球ボールとグローブで遊んでいた魁に、会った日。
天国はとてもそれが楽しそうに見えて。
幼い頃から仕事に追われていた天国には、それがとても羨ましくて。
だから、その時何も考えずに魁に話しかけた。
魁はその時、野球のルールや楽しさを、とても熱心に天国に語った。
そして天国は約束をとりつけた。
いつか魁にボールを投げて欲しいと。
試合の場で、自分に向かって投げて欲しいと。
それは少年らしさを奪われていた天国の、初めての切なる願いだったのだ。
そして3年。
正体がバレるというイレギュラーもあったが。
約束は果たされようとしていた。
次の試合で、天国は魁の前に立つだろう。
精一杯の 想いをこめて。
『打ったーーーーーー!!大きい、大きいーーーーーーッ!!』
そして空へ。
少年時代の証明を描く。
end
紫央さま、リクエストにお答えするの遅くなり本当に申し訳ありませんでした!
素敵なリクエストいただいてたのに…本当に自分という奴は。(殴)
え〜〜、今回は「君の名は?」のモデル設定、なんだか今までとは違う裏話見たいな話になってしまいました。
前回の猿鳥バージョンとはまた違ったモノになってます。
全体的に真面目な話にしてるつもりです。ただ個々人の反応は少しずつギャグっぽく。
場面転換して、「何故天国はモデルなのに野球を始めたか?」みたいな感じですね。
ただほとんどつもりなので実際にはギャグなのかシリアスなのかわからない話になってしまい…(TーT;
文章力のなさがいつもながら浮き彫りです。
こんなもんで本当にすみませんが、紫央さまにささげます。
リクエスト、真に有難うございました!!
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